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『海へ』



海へ。
私は、小さな頃から海に憧れていた。
夕方の時の長い影よりも、親よりも、大きな所だった。
そんな海と同じくらい、大きな心を持ちたいと思った。
そして、私にとって、海はいい居場所だった。
嫌な事があった時、もうどうしようもない時。
海に呟けば、許される感覚がした。
ゆらりと揺れる光。沈み行く月が美しく、夜、息が詰まるような家を抜け出し、夜が明けるまでずっと海岸から眺めていた。
流れ行く雲。照らされる空と町。
夜が明ける頃の空が、綺麗だと感じた。
この町が変わっても、それだけは変わらないでいてほしい。
どうか……。

8/23/2023, 12:37:34 PM