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 長い長い旅路の果てに、魔王城に辿り着いた。

「よく来たな、『勇者』」

 書斎のような部屋の中で、豪奢な椅子に座っていたのは人間の男だった。

「……久しぶりだな、『魔王』」

 世界中から『魔王』と呼ばれるその男は、俺のかつての友人だった。

 深い悲しみに打ちひしがれて、男は『魔王』に成り果てた。
 それをただ見ていただけの俺は、あのとき止められなかったくせに、今や『勇者』なんて担がれてこの場所に立っている。

「お前が来るのを、待っていたよ」

 そう言って『魔王』は、そっと剣を差し出した。

「もう疲れたんだ」

「……」

 『勇者』は静かに、『魔王』を討ち果たした。



 魔王城を出ると、空を分厚く覆っていた黒雲が晴れていくところだった。

 こんなところでも花は咲くらしい。
 ふと見ると、故郷に咲いていたものと同じ花が、静かに風に揺れていた。



『旅路の果てに』

2/1/2024, 4:10:47 AM