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「ふう、やっと寝てくれた」
 私の前にいるのは、すやすやと眠る小さな息子。
 さっきまでゴジラのごとく暴れまわっていた彼だが、ようやく大人しくなってくれた。

 自分も一緒にひと眠り――と言いたいところだけど、私は寝ることは出来ない。
 眠りにつく前に、やらないといけない事があるのだ
 部屋の片づけ、皿洗い、風呂掃除。
 ああ、旦那の晩飯の準備をしとかないと

 やることがたくさんだ。
 さっさと終わらせてしまおう。

「キャー」
 突然外から聞こえる乙女の悲鳴。
 大変だ、助けないと!

 誰かが助けを求めるなら、私の出番。
 なぜなら私は正義の味方、ママ仮面!
 家事の前に、一仕事だ。

 私は息子を起こさないように外に出る。
 声の主は家を出てすぐの所にいた。
 今まさに化け物に襲われそうになっている女の子が!

「危ない!」
 私は全力で走り寄り、怪物を殴り飛ばす。
 私に殴られた化け物は、吹き飛んで塀に打ち付けられた。
 もう動かない
 コレで大丈夫だ。
 
「あなた大丈夫?
 けがはない?」
「ママ仮面、ありがとうご――後ろ!」
「はっ」

 女性の声で振り向く。
 するとすぐ後ろに、吹き飛ばしたばかりの怪物が私に体当たりをしようとしていた。

 防御が間に合わない!
 私は覚悟して防御の態勢を取り――しかし、衝撃が来なかった。

「無様だな、ママ仮面」
「その声は!」

 防御の態勢を解き怪物を見る。
 そこにいたのは、怪物を組み伏せた子供――オムツ男爵がいた。

「助かったわ。
 オムツ男爵」
「一つ貸しだぞ」
 そういうと、オムツ男爵は身を翻しどこかへと去っていった。

 オムツ男爵。
 謎の子供貴族……
 私がピンチになると、颯爽と駆けつけてくる謎の存在……
 怪物退治という目的こそ共通しているが、彼の真の目的は別のように思える。

 奴は一体何者なんだ。


 ◇

「いったいZzz なにものZzz」
「よく寝ているなあ」

 仕事が終わって家に帰ると、リビングで息子と妻がぐっすり寝ていた。
 テレビはヒーローものの番組が映されている。
 一緒に見ているウチに、そのまま一緒に寝てしまったに違いない。

 この様子だと、他の家事は終わってないだろう。
 起こすのは忍びないので、自分が代わりに家事をすることにする。
 普段は妻に任せっきりだが、たまには自分がやるのもいいだろう。
 俺はテレビの電源を切って、ズレていた毛布を妻と息子にかけなおす。

「おやすみなさい、良い夢を」
 そのまま音を立てないよう離れ、まずは台所に向かうのであった

11/3/2024, 3:29:40 PM