銀の月の周りを洗濯物が泳ぐ。あれがきみの住む街なんだって。
おもちゃのロケットがびゅうびゅう飛び回って銀の月を目指しては落ちていく。届かない。
遠すぎるから? ううん、近すぎるから。
さざなみがよせては返すのをこの手のひらは感じているのに、目に見えるのは風だけだ。
抜け殻のきみのシャツが笑う。僕も抜け殻になれたらきみの街まで行けますか?
半径五千キロメートルの憎しみと悲しみを点にしたら泡ぽこみたいな笑いがこぼれて宙へ立ち上る。
そうか、ここは水の中なのか。きみの抜け殻はロケットに絡め取られてどこかへ飛んでいってしまって、僕は慌てて紙飛行機を飛ばす。
飛ばした手が流線型になって僕の手が、腕が、飛行機になる。僕の右手は僕をどこかへ連れていく。
きみの抜け殻のところかい? 違うかも。でも、もしかしたらそうかも。分からないね。
僕の魂が、どこかへ飛んでいってしまったら、ハンモックみたいにさ、優しく受け止めてくれないかな。
助けてほしいの? ううん、そうじゃない。ただ自由に泳いでみたいだけなんだ。
【お題:こんな夢を見た】
1/23/2024, 1:19:16 PM