こし

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小学生の頃花束をもらったことがある。ピアノの発表会で両親から花束を贈られたのだ。
小さな教室の発表会だから、観客は家族がほとんどだった。
それでも、幼い私にとって花束をもらうなんて初めてのことである。
自分が大層立派なことを成し遂げた気がして、とても誇らしかったのを覚えている。
その当時大好きだったピンク色を中心とした花束は華やかで甘い香りがして、家に帰るまでずっと腕に抱えていた。

もう一度花束を抱えたのは高校生の頃、入院した祖母のお見舞いの時だった
自宅で転んで、骨折してしまい緊急の入院だった。
母親と一緒に花屋へ行き、祖母が好きな黄色の花を中心に花束をつくってもらった。
ガーベラを中心に香りの弱いものを選んで、少しでも明るい気持ちになってくれたらと考えながら病院まで抱えた日。
病院のベッドに居る祖母はひとまわり小さくなったような気がして、この祖母を回復させることがはたして花束にできるのだろうかとひどく不安になったものだった。

そして、今大人になった私は自分のために花束を買っている。
その日の気分に合わせて、水色だったり緑色だったり、はたまた紫色だったりする花束たち。
小学生の頃のような誇らしい気持ちや、高校生の頃の不安な気持ちは芽生えないけれど、花束を抱えた時は穏やかで、心が温かくなる。
そうして、自宅で花瓶に生けられた花束を見て明日の英気を養うのだ。

2/9/2024, 1:56:57 PM