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君とはもうかれこれ
20年近くの付き合いになる
いつも明朗で優しい君が
はらはらと泣いている姿を僕は見たことはないけれど
一度だけ君の目が赤く潤んでいた時の事は
未だに脳裏に焼きついている


それは部活終わりの放課後
何故か僕らは昔の話をしていた
その昔僕は虐められていて
君はそれを傍観していた
子供の小さな世界の中で
強者に逆らう事がどれほどの意味を持つか
想像には難くない
もうそれは仕方なかったと
僕が君に言った時
君はぽつりと「ごめんね」と溢した
気にしないでと返そうと君の方を向いた時
僕は目を見張った
君の目に涙が浮かんでいるのを
その時初めて見たからだ

虐められていた当時の事を
誰かに謝られたのはそれが最初で最後だった
復讐心も憎悪も特段持ってはいなかったが
その時確かに僕は何かに区切りをつけた
区切りをつける事ができたのだ

3/17/2023, 4:04:05 PM