すれ違う瞳 2025.5.3
朝食後。すでに出ていく準備を終えて、まだ家を出るまでに時間があった俺はのんびりとテレビに映る天気予報を眺めていた。
ふと壁のカレンダーに見た後、時計を目にした。
……俺はこのとき思ったんだ。
兄さんに俺のこの思いをわかってほしい。俺の望みをかなえて欲しい。
俺はテレビから目を離すと、兄さんに熱い視線を送った。
ああ、兄さん……。
俺はソファに転がって兄さんの背中を見つめる。
俺の願い、わかってるんだろ?
俺の考えてること、わかってるはずなのに、どうして振り向いてくれないんだ?
兄さんは俺に背を向けて、出社の準備をしている。見つめる俺の瞳になど、気づきもしないで。
*****
朝食後のこと。
俺はテレビから流れてくる天気予報に耳を傾けながら、ワイシャツを羽織り、ネクタイを締めていた。
背後から視線を感じたが、気のせいだろう。
特に気にすることもなく、髪を整えて鏡でチェックする。
すると、壁に貼ってあったカレンダーが目に入る。隣の時計も見ると、そろそろ出社の時間だ。
ああ、弟よ。
俺の願いが伝わるだろうか。そう願いながら弟に熱い眼差しを送る。
気づいてくれ。この思いにどうか。
しかし弟は俺の方に瞳を向けず、スマホをいじっていた。
不意に弟がスマホから目を離し、俺の方を見た。ひたと見つめる眼差しが、俺に何かを訴えかける強いものを宿していた。
*****
俺はスマホから目を離して顔を上げ、願いを込めて兄さんの瞳を見つめた。兄さんの瞳には、何かを期待する色が浮かんでいる。
俺の中にある期待は、兄さんに伝わるだろうか。
見つめ合って、どれくらいの時間が過ぎんだろうか。
ようやく俺はソファから起き上がると、兄さんに近づいた。兄さんは俺がいたソファに近づいてくる。
俺は、兄さんに気持ちをぶつけた。
兄さんも俺に思いを伝えてきた。
「ゴミ出しに行ってくれよ」
ゴミ捨て場自体はマンションに付属している。
しかしずいぶんと奥まったところにあるため、一旦ゴミ捨て場に行ってから、引き返して道路に出ないといけない。
歩いていくのが面倒だった俺は兄さんに訴えたのだが、どうやら兄さんも同じ気持ちだったらしい。
お互いに分かりあった俺たちは、用意したゴミ袋を押し付け合い、遅刻ギリギリまで粘る。
「あっ」
そんな俺たちのあいだにあったもみくちゃにされたゴミ袋は裂け、この時期の生ゴミが玄関にーー
お互いにブツブツ言い合いながらごみを片付けた。
そして結局ささやかな争いに負けた俺がゴミを持って家を出ることに。
その時、兄さんが会社に遅れることを連絡しているのが見えた。
だったら最初から兄さんがゴミ出しすればいいのに。
結局ごみ出しには遅刻し、
俺も授業に遅刻した。
5/4/2025, 2:18:18 PM