世界にひとつだけ 唯一無二
とても大切な、特別な、ほかに変わりのないもの
しかし本当は世界に同じものはひとつも存在しない
同じ木になったリンゴでも、色もカタチも微妙に違う
大量生産されたリンゴの置物でさえ、あるものは誰かの思い出となり、玄関の靴箱の上にひっそりと飾られ、あるものは子供のおもちゃとなり、あるものはさっさとゴミ箱に捨てられる
時間という運命は、不可逆的な網の目のように私たちをちがう場所へと誘う
一秒前の空を見ることは永遠にできない
私たちは底なしに自由で、私が私でいる確証もない、一秒後にはすべてが終わるかもしれない世界で生きている
自由な翼を手に入れた代償は、足元にひろがった永遠の闇だ
私たちは手をつないで、名前をつけ、同じだと思い込む
足元の闇に囚われないよう、そこに大地があり今日と同じ明日がくると思い込む
そうやって作られた「同じ」世界は、安心、安全できゅうくつな愛すべきたましいの牢獄だ
そこでは自由、違うこと、闇でさえが、もてはやされる
わたしは虫に食われた木の葉を一枚手にとって、ハッとする
9/10/2024, 1:35:18 AM