創作「突然の別れ」
大人しそうな男子生徒は、目の前にいる憧れの彼女の言葉に耳を疑った。彼女は便箋を置いて照れたように口を開く。
「だーかーらぁ、お友達になろうって言ってるの。何度も言わせないでよ」
以前、彼は彼女から恋文を突っぱねられ盛大に振られていた。だが、彼女の「二度と現れないで」の言葉を聞かないふりをした彼は、書き直した恋文を携え彼女のもとを訪れたのだった。
「友達になって良いのか、本当に?」
「もちろん。でないと、きみは何度も来るでしょ。ま、今日からよろしくね」
そう言い、彼女は明るく握手を求めた。彼は戸惑いつつも朗らかな表情で手を握り返す。後日、大人しそうな男子生徒は自ら文芸部へ編入した。そして彼女との友情を勝ち取り、学校生活を送っているのだった。
一連の出来事は大人しい彼のかつての自分との別れであった。まさか彼女から友達になってくれるとは思っていなかった彼にとって、まさに突然の別れと言えるのであった。
(完)
5/19/2024, 11:22:07 AM