「『物語のお約束』といえば、爆破オチに主人公補正、それから恋愛系に鈍感。
『物語の約束』は、有名どころでは『ノックスの十戒』とか『ヴァン・ダインの二十則』とかか?」
公的文章の約束としては、会話文は「このように。」カギカッコの最後に句点を付けるそうだが、
大抵の現代小説、ライトノベル、雑誌編集等々では最後の句点が省略されがちである。
なんでだろな。某所在住物書きは首を傾けた。
理由は諸説あるらしい。
「かく言う俺も、最後の句点は省略してるわな」
ところで物書きは、個人的になるべく正午から午後2時近辺の間で、2000字未満の文章を投稿できるよう、自身に対して約束を課している。
3年前は1000字未満、600字程度だった。
来年には2500字にでもなっているのだろうか?
――――――
前回投稿分と繋がるおはなし。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織があり、
そこの組織理念は、
「それぞれの世界が、それぞれの世界として独自性を保ち、独立して在れるように」。
すなわち途上世界が先進世界によって、侵略・略奪・植民されないように。
あるいは「その世界」のものではない技術が、秘密裏に持ち込まれてその世界を壊さないように。
世界間を取り締まり、支援し、円滑な運行を実現する。それが世界線管理局。
前回投稿分で雪国出身の東京都民が、異世界人と接触して、その異世界人の職場へ向かってしまった。
世界渡航技術が確立していない東京、日本、地球。
その現地住民が異世界人と接触した場合、
管理局はその現地住民に対し、記憶処理を為すのが遠い遠い昔からの約束、ないし慣例である。
この世界が「この世界」であり続けるためにも、
異世界渡航技術が確立されていない今の東京において、「異世界」は「まだ」夢物語。
異世界は「まだ」、「ゲームや漫画、アニメ等々の中だけのおはなし」でなければならない。
「どうします、ルリビタキ部長」
世界線管理局法務部の特殊即応部門、ビジネスネーム「ツバメ」が、上司の部門長に伺いをたてる。
「あそこまで異世界人と関わってしまったら、我々としても、もう黙っていられませんよ」
「少し様子をみる」
尋ねられた「ルリビタキ部長」は短く答えた。
「あの雪の現地住民がどう動くか、少し見たい。
それから、そいつにコンタクトをとって自分の職場に招いた、多様性機構の職員の方も」
とはいえ、そろそろ動く必要はあるだろうな。
そう付け足したルリビタキは小さなため息ひとつ吐くと、仕事前の一服として、タバコケースを掴み法務部の外へ出ていく。
一服が終われば仕事の始まり。
タバコは所定の、決められた喫煙スペースで。
1回に吸うのは3本まで、1日あたり■■本だけ。
それがルリビタキに課せられた遠い約束。
「異世界の組織、『世界多様性機構』と接触した現地住民、藤森 礼の間接的監視と評価を開始する。
まずは藤森の後輩、高葉井 日向に接触して、情報収集だ。藤森が現段階で、どこまで他人に異世界を吹聴しているか、していないか、確認だ」
異世界はまだ、ゲームや漫画、アニメ等々の中だけのおはなしでなければならない。
ルリビタキは東京に、管理局がリリースしたゲームのキャラクター「ルリビタキ」の、
「バチクソよく似たそっくりさん」あるいは「声まで似ている神レイヤー」として、潜っていく。
それぞれの世界が「それぞれの世界」であり続けるために、独自性を保って独立していられるように。
ところで突然ながら、
ルリビタキが接触しようとしている「藤森の後輩」の高葉井 日向(こうはい ひなた)なる女性だが、
実はゲームのキャラクターとしてのルリビタキとツバメを推しとして崇拝する、ツバメ&ルリビタキの元二次創作執筆者にしてツル信奉者でして。
「うー。図書館、意外と覚えること多い……」
場面変わって、こちらは最近最近の都内某所、「世界線管理局」のゲームの聖地にして生誕の地たる某私立図書館、その第一閲覧室。
「0類がなんだっけ、1類が宗教で、ひとまずマンガが7類にあって小説はだいたい9類、913……」
今年3月から図書館に転職してきた高葉井が、
自分の推しのルリビタキが自分を通して自分の先輩を監視しようとしていることなどいざ知らず、
図書館の貸し出し受付窓口のカウンターで、「どの書架にどの本があるか」を勉強している最中。
ひとまずあの本がそこにあって、その図鑑がここにあって、世界線管理局のゲームの聖地ゆえに存在する世界線管理局コーナーは第二閲覧室。
あーあー。キンタイって、禁帯って、なんだっけ。
何の略だっけ。勤怠?金帯?ガチャ?
高葉井が勉強用のメモを、一生懸命辿っていると、
「本を探している」
ようやく登場。高葉井が座るカウンターの真ん前に、物語の前半で登場していたルリビタキである。
「『ボタニカルイラストで見る世界のスパイス・ハーブ図鑑』という名前だ。調べてくれ」
「へっ、」
高葉井は硬直した。ルリビタキである。
「る、るっ、るり、るーぶちょう、」
親の声より聞いた声が、親の顔より見た顔をして、自分の前に立っている。自分に話しかけている。
「ルリビタキか」
そこに更に爆弾が投下。
「よく間違われる。ゲームのキャラがここに居るわけないだろう。ともかく、調べてくれないか」
「ひ、ひゃ、ご、」
「『ご』?」
「ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!!」
「は?」
自分の推しが突然現れて、短期間で許容量を超える尊みに曝露してしまったことで、
耐えきれず、高葉井は重篤な急性推し中毒を発症。
「すいません、ごめんなさい、わ、わぁぁ!」
「落ち着け、おちつけ!俺が何をした」
「存在した!」
「そんざいした????」
その後1時間ほど、情緒不全であったとさ。
4/9/2025, 4:31:06 AM