詠み人知らずさん

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バイバイ
僕は、母を殺した。
理由は単純にただ殺したかっただけ

ねぇ母さんあの日を覚えてる?
僕を殴って「死ね」って言ったこと。
あれ、すごく痛かったんだよ?

お母さんはのうのうと生きて、自分はこんなに苦しむって少し不公平なんじゃないかな?


僕はその日までどんなことにも耐えた。蹴りも、殴りも、痛々しい暴言も

「あんたなんか生まなきゃよかった」

この言葉を聞いたとき僕はどう思ったか考えたことがある?


僕は、おもいっきり母の中核に向かって刃を向けた。
そうすると母が苦しそうにあがきもがいた。
刃先がどんどん真っ赤に染まっていく。
「ハハッ」そう呟くと同時に
母が蚊が泣くような声で言った
「ごめんね、正ちゃん、ええおかんになれんくて、ちゃんと愛してあげれんくて、ほんまにごめんなぁ、うちの分までちゃんと幸せになるんやで」母はそうやって安らかに息を引き取った。
その時にはもう涙が流れ始めていた。
真っ赤に染まった刃物が涙によって薄れていく。


「正ちゃんはうちの一生の宝物や」


あぁ、あの頃の母ちゃんや


お題「喪失感?」




9/10/2023, 2:33:12 PM