カーテンがオーロラのようにたなびく。
奥ゆかしささえ感じられる陽光は、スポットライトのように埃たちのダンスを照らしている。
瞼が眠気に抗えずゆっくりと上下する。まるで紳士がする拍手みたく尊大だ。
だがそんな微睡みを引き裂くように、ジャッと鳴きながらカーテンが左右へ開かれる。
容赦無く俺の顔を陽の光が照らす。まるで大怪盗がするみたいに俺は手で顔を覆った。
「いつまで寝てんのさ。そろそろ起きろー」
「まぶし……」
「天気いいよ。買い物行こ」
カーテンを避けながら彼女が掃き出し窓を開ける。心地よい風がカーテンをふわりと浮かせた。
振り向き微笑む彼女が背に光を浴びる。その姿がまるで後光の差す聖母のような—。
「……ぅえっくし!」
俺のくしゃみで埃たちが逃げ惑うようにブワリと舞う。
「風邪?」
「いや、急に眩しかったから…」
俺は鼻を啜りながら答える。眩しそうに顔を顰める俺に、彼女はハッとした表情をする。
「”光くしゃみ反射”だ…!」
「なんだそれ」
「太陽見るとくしゃみ出るやつ。知らない?」
嬉しそうに言う彼女に俺は呆れる。てっきり謝られるもんだと思っていたのに。しかし嬉々として蘊蓄を語る彼女に、俺は苦笑しベッドから起き上がる。
いつもそうだ。結局その笑顔に絆されるんだ。
やわらかな光が二人を包む午前九時。俺たちの一日がまた始まる。
≪やわらかな光≫
10/17/2024, 12:16:37 AM