シン

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【星のかけら】
昔、見た、あの流星群
ただ綺麗だとそう思った

整理している瓶の中に一つ
色とりどりの綺麗な何かが入っているのを見つけた
『師匠、この瓶に入っているのは?』
「それは“星のかけら”だ」
『星のかけら?』
「そうだ、数百年に一度の流星群の日に
  空から降ってくる星が地上に落ちたもの
             それが星のかけらだ」
『へぇ〜綺麗だね』
「綺麗だけで済んだら良かったんだがな」
『どう言うこと?』
「いいか、星のかけらは叶え星とも呼ばれる
 それは、手にした者の願いを叶え星一つにつき
 一つだけなんでも叶えるからだ
 ただ、非常に脆い、地上に落ちた時に
     割れない方が奇跡とも言われるほどだ」
『割れたらどうなるの?』
「それはもう叶え星ではない、ただの石になる」
『そっか、いつか僕も見つけられるかな?』
「あぁ、きっと、きっとな」

あれから何十年何百年と過ぎていった
今日は、流星群の日
師匠、見ていますか

周りには石が転がる中、ただ一つ美しい光を放つ
“それ”がそこにはあった
『…あった、星のかけらだ』
慎重に丁寧に瓶の中に入れる

ふと、向こう側に一際光を放つものを見つけた
なんだと近づくと、そこには星のかけらと同じ様に
美しい光を放つ髪を持つ子供がいた
『何故、こんなところに子供が…
            ひとまず連れて帰ろう』

連れ帰ってみて、驚いた
その子供が僕の幼い頃にそっくりだったからだ
髪の色も、背丈も、何もかも

そして、思い出した
僕には師匠と出会う前の記憶がないこと
気づいた時には師匠のところにいたこと
あの流星群の日の記憶だけが
脳裏にこびりついて離れないこと

きっと、師匠は知っていたんだ
僕がこの子と同じ存在ということを
僕がこの子を連れ帰ったのと同じ様に師匠も
あの流星群の日にきっと、僕を連れ帰ったんだ

〈「“君の行く末に幸あれ
  いつまでも見守っているよ、私の可愛い弟子”」〉

『師匠…僕、この子を育てるよ
  師匠が僕にしてくれたみたいに
   だから、僕の僕らの行く末を見守っていてね
             大好きだったよ、師匠』

1/9/2025, 1:55:54 PM