星を追いかけて
小さい頃から流れ星が好きだった。
親に連れられて行ったキャンプ場、夜空にきらめく一筋の光。一瞬の出来事だが、私を夢中にするには十分だった。
それから私は夜空を見上げるようになった。
暗い夜空に星が瞬いて見えるのは綺麗だったが、私の目はいつも流れ星を探していた。
昼間にも流れ星が見えることがある、と知ってからは昼夜問わず気づいたら空を見ていた。昼間の流れ星はそうそう見えるものではない。それでも私は空を見上げ続けた。
中3の夏。よく晴れた暑い日だった。教室では先生が夏休みの諸注意を読み上げている。
いつものように空を見ていた。悪かったテストの点を気にしていないふりをしながら。
いつのまにか話は終わり、帰り支度をする。
「一緒に帰ろー!」
いつものグループに誘われ頷く。
「でさー、2組の男子がさぁー」
「え、それほんとに?」
「でもさぁ、意外とー」
いつもの帰り道。いつもの話し声。いつも私は聞き役にまわる。この4人でいるときも空を見てしまう。
「あ、また空見てたでしょー」
バレた。でも、私は空から目を離せずにいた。
「流れ星だ」
思わずつぶやく。
「え?どこ?」
「ほんとだ!なんか光ってる」
「UFOじゃない?」
そんな友人たちの言葉を背に私は走り出していた。
なぜ?自分でもわからない。ただ体が動いた。
あの星に追いつけるはずもないのに。
走った、流れ星を目で追いながら。
ほんの一瞬の疾走。
それは、電柱へ衝突することで止められた。
地面に背がつく。
目の前には青空。
そこに一筋の光。
きっと私の頭の上にも星が回っている。そんな馬鹿馬鹿しいことが頭に残った。
7/21/2025, 1:30:58 PM