ななしのごんべい

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「1000年先も恋人でいようね」
何言ってるの、と内心思いながら、私は
「もちろんだよ!!!」
と大きく頷く。笑顔も忘れない。
ちゃんと目尻は下がっているだろうか。彼の背後の壁のシミを見つめる。
「俺はかわいい優里のことが1番大切だよ〜ずっと大切にするからさ!」
呆れる。私はあなたが1番嫌い。
「え〜?ありがとう、嬉しいな〜!
 絶対浮気しないでよね?」
「するわけないじゃん!ほんと、優里かわいい」
薄暗い室内に、彼の声が響いた。
いまは何時だろう。何月だろう。何年だろう。やりたいことがたくさんあったはずなのに。
なんで、どうして私が。

考えるのをやめなさい。
きっと、考えても何も変わらないだろうから。
「じゃあ俺、外出してくるけど、」
ああ、はいはい、分かってるよ。何回も聞いた。聞き飽きた。ずっと同じ言葉だから一言一句違わずに言えちゃうよ。
「絶対に外には出ないでね。」
がちゃん、と金属の音がして。
私は鉄格子越しに彼を見送った。

2/4/2024, 8:30:17 AM