no.14:ひそかな想い
教室とは真逆の細い道へと駆け出した。
サトルにはこんな顔は見せられない。
迷子になってるあたしの歩き方だって、見られたくない。
頭が真っ白で、どこにいるのかさえもわからなくなる。
自分の知らない場所に行くチャンスだ。
記憶にない道をでたらめに歩けば、必ず何かと出会う。
三毛猫がのそっと顔を出す裏路地に、マゼンタ色のネオンが光るケバケバしい看板。
教室の行き帰りじゃ見過ごしてしまうけど、あたしと埋まらない距離を持つ世界は、探せばいくらでも見つかる。
ちぎれた心が、こういう場所に隠れているかもしれない。
そんな考えを温めながら、パンプスで小石を蹴飛ばす。
ひとりで迷子になるのは楽しい。
でも、それをサトルに知られるのは嫌だ。他の人にはそもそも迷子になりたい願望を喋ろうとも思わないのに、サトルに対しては何故かムキになってしまう。
あたしは冷や汗をかく。
今まで通り、鋭いけど鈍感なフリをしてくれるサトルでいて欲しい。
あたしを見てるけど、干渉はしてこない。サトルが今のままの距離でいてくれないと…あたしは本気で彷徨って、帰ってこられなくなりそうだ。
2/20/2025, 12:59:44 PM