DECO*27さん『二息歩行』オマージュ
元々ちっぽけな生命の塊。そこから自我を持ち、手足が生えていく。
もし、この手足に意味を持たせるならば、君を抱きしめるため…だろうか。
独りじゃ寂しい。そんな愚かな孤独さえも覚えてしまった僕は君と息をするよ。
吸って吐く、だけの簡単な作業。単純明快、簡明で率直。だけどふと意識をすると全てを感じる。呼吸と同時に聞こえる鼓動。酸素を求める肺。それらを感じると同時に、
息をするのがとても怖くなる。
人間は一生涯の鼓動の数が決まっているだとかそんなこと言われた手前、皮肉なことに、息をすることが生きるためではなく着々と死へ近づく自傷行為に感じてしまう。
「ねえ、ママ、僕…好きな人ができたんだ。」
息を吸って吐いて散っていく人生に例外なんて要らなかった。ましてや、好きな人だなんて。恋愛感情なんて抱かないはずだったのに…。
母は笑うんだ。微笑んで頭を撫でてくる。
「“おめでとう”」
ねえ、君は今誰の乳を吸って生きているのかな。言葉はもう覚えたのかな。自立、出来たのかな。
知りたい。知りたい。君と生を共有したい。
君を抱きしめたい。そうやって、抱きしめるために浮かせた前足。
…おかしいな。
何故かその前足が、君を傷つけようとしてる。
覚えたての言葉で、君を傷つけようとしてる。
言葉は時に凶器になる。わけもわからずに言の葉を操ることで、僕の言葉はナイフになる。
僕は、君に愛を伝えるために言葉を覚えたのに、何故か君にナイフを突き立ててる。
「じゃあアタシがナイフ放つ前のその口を、この口で塞いであげましょう。」
相対のチュー。
「キミは、今からアタシの息を吸って生きていくの。」
言葉のナイフはもう、唾液で錆び付いた。
ねえ、君は今更僕の息を吸って「大好き」だなんて言ってみせるけど。
それならもういっそ、ボンベのように一生
僕が吐く言葉吸って、息絶えて、
君と一緒に生きて、逝きて、息たい。
1/7/2025, 2:26:50 AM