『明日のあなたの心模様。曇り、のち、雨。午後は六十パーセントの確率で雨でしょう』
乳母ットが、またもや変な天気予報をうたう。その姿を横目に、私は思わずため息を吐いた。
長年一緒にいるこの鳥型の乳母ット——チルは、いつの日からか天気予報ではなく、私の心模様を予報するようになった。
「しかもよく当たるし」
その硬い羽を指でつつくと、チチチと甲高い声で鳴かれる。昔は「止めてください」って言ってたのに。これもいつからこうなのか、よく覚えていない。
「明日は面接なの」
それでも修理窓口へと連れて行かなかったのは、その方が都合がいいからだ。私はもう子どもじゃないから、小言なんて必要ないし。何でも自分の端末で検索できるし。それでも親を心配させないために連れてきたチルは、今では私の愚痴の聞き役だ。
「私あがり症だから心配なんだ」
机の上のチルへと、私は呼びかける。不安な時、困った時ずっとそうしていたから、もうこれは癖になっている。何て言われるかも予想がつく。「緊張しない人間なんていません」って、チルならそう答える。
「まあ圧迫面接だったらこっちから願い下げだもんね。それ確かめに行くくらいの気持ちでいいか」
そう、チルだったらそう言って励ましてくれる。だから今のチルは聞いてくれるだけで十分だ。まともな答えなんて期待してない。それでも寂しくなんてない。
「だから明日の予報はハズレだよ」
もう勝手に動くこともしないチルの羽を、私はもう一度指先でつついた。すると少しだけ首を傾げたチルは、またチチチと甲高く鳴いた。
4/23/2023, 10:35:13 AM