波切

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 遠くに見える砂丘の上に、逆光を背負って君が立っている。
 大声をあげて名を呼ぶ。口を開けた瞬間、乾いた喉に熱風と、飛来する砂粒が飛び込む。喉への刺激に耐えきれず、俺は下を向いて咳き込んだ。

 膝に手をつき、丘陵を見上げる。

 君はまだそこにいた。強い風に吹かれて、真っ白なスカートの裾が揺れている。透き通るように鮮やかな空との対比が美しい。逆光で、顔はよく見えない。

 潮の匂いは焼ける砂の熱気に掻き消されている。
 汗と涙がまじりあったものが頬を落ちていく。
 君は返事をしない。ただ麦わら帽子のふちを片手で押さえて、見下すようにこちらを眺めて蔑んでいる。



 あの日薬を飲み始めてから、ずっとそんな悪夢をみている。
 これまでもそうだったし、これからもそうだろう。おそらくずっと続くのだ。得たいのしれない少女に蔑まれつづけるのが、きっと俺の心象風景なのだろう。




#これまでずっと

7/12/2023, 10:13:50 AM