谷茶梟

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君の奏でる音楽
(ワールドトリガー夢創作)
ボーダーの雑踏の中、大嫌いで気になるあいつを見つける。水上はただ一言、言いたくて近づく。こちらに気づいて、微笑む顔が嫌いで。それはどうしようもなく、羨ましいから。
「莉子さん、今日の配信聴きました」
「あ、ありがとう」
「もうちょっと本気で歌えないんすか」
水上は淡々としたトーンで、ちくちくと莉子を責める。いつものことなので、莉子は苦笑い。
「やっぱ水上くんには分かる?」
「そりゃ分かりますわ。本気のあんた聴いてりゃ」
最初から気に食わなかった。あの人に想われているあんたが。それなのに、あんたの歌を聴いたら、自然と涙を溢す自分がいた。水上はそれを一生の不覚と思うし、歌で手を抜く莉子は見過ごせなかった。
「また聴かせてくださいよ」
あの時みたいに。彼女に完全に負けるとしても、もう一度聴きたいと思う歌。ちゃんと躾けて欲しかった、俺はあんたにはなれっこないのだと。

8/12/2023, 2:36:40 PM