「やい、何処へ行かれるか」
妻に先立たれてから、見境なく話し掛けるようになってしまった。いや、"なれた"と言う方が正しいだろうか。
「ふふ……あなた、人見知りは治ったの?」
「おや、君のは、まだみたいだね」
小さな体は、塀の上を軽やかに歩き去っていく。
「1人で大丈夫かい?まだ、そんなに小さいじゃないか」
「元は大人よ?」
彼女は腕の代わりに短かな尾を振った。
丸い腰に白い毛に性格、生前の妻そのままだ。
猫は一生に一度だけ喋れると言うが
「…まだ心配性は治ってないみたいだね」
11/16/2024, 5:58:16 AM