sweet memories
高校2年生が、もう1ヶ月もなく、終わろうとしていた日、帰ろうと靴箱を開けると新聞紙に包んだ小さな薄いものが入っていた。周りに誰も居ないのを確かめて開けてみると、板チョコが1枚。
「え?今日ってバレンタインデー?あ、でも誰?うちは女子校だし」と思いながら、その頃の彼氏との待ち合わせ場所に行った。
まだ私の時代は、バレンタインデーなどそれほど普及していなかったから、包みを見たときもしばらく考えたほどだ。
彼は先に来て待っていた。私は挨拶もそこそこに席に着き、注文したあと「これさぁ」と、例の包みを取り出した。
「学校の靴箱に入ってたの。開けてみたらチョコレートだった」
「ふむ」
私はチョコレートの包みを開けて、ひとかけら口に入れてから「食べる?」と聞いた。あの時の彼の顔と口調は、今でも覚えているほど複雑な雰囲気だった。
「いや、いい」
なんとなく冷たく、最小限の短い言葉。無神経な私は何も気づかず、チョコレートをある程度食べて鞄に仕舞った。
今なら「これさぁ」とチョコレートを取り出した時の彼の気持ちはよく分かる。『おーっバレンタインチョコ来たーっ!』それなのに、女子校の私の靴箱に入っていたと聞かされ、一気に期待は崩れ落ちただろう。この日をデートに設定したのだって、そのためだと思っていたかも知れない。
さらに追い打ちをかける私。そんなものを「食べる?」って・・・。
この出来事は、甘いモノの思い出として、そして苦い思い出として、今でも鮮やかに思い出すが、私の女子としての最低の出来事だと思う。
ホント、最低〜!!!
No.186
5/3/2025, 9:51:30 AM