真空

Open App

同情

「ごめん。」
「いきなりなに?」

貴方に謝られるようなことなんて何もない。
人間が「俺」を忌み嫌うのは仕方のないことだ。
誰だって自分と同じ形をしているくせに違う生き物を怖がるのは当然だろう。
特に俺なんて彼らにとっては全く持って理解のできない化け物にしか見えないだろう。
彼らが当たり前に持っているモノを持たないくせにそれでも生きているのだから。
だからまあこの身体の傷はしょうがないことなのだ。

「なに?とめられなかったから?助けられなかったから?いいよ別に助けなんて求めてないし。」

事実なのに貴方は顔を俯ける。
罪悪感なんて感じる必要はないのに。
そうやって見ないふりもできやしない。
なんて可愛そうな貴方。

誰よりも強大で素晴らしい力を持つ俺と同じ生き物。
人間の役に立つ力を持つが故に人間に受け入れられてしまった異物。

「貴方も俺と同じなのにね。」

ホント可哀想。
人間と同じモノだと思われているなんて。


【表裏一体】

2/20/2023, 10:38:28 AM