夜の祝福あれ

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残響の中の灯

春の終わり、陽だまりのような彼女が去った。

恋だった。間違いなく、恋だった。
初めて手を繋いだ日、彼女の指先が震えていたことも、
雨の日に傘を忘れてびしょ濡れで笑っていたことも、
すべてが、恋の記憶だ。

でも、恋は熱を持つ。
熱は冷める。
そして、彼女は「好きがわからなくなった」と言って、僕の前から消えた。

残された僕の胸の中には、空洞があった。
恋が抜け落ちた場所。
でも、そこにぽつりと残っていたものがある。

彼女が風邪をひいたときに作ったお粥のレシピ。
彼女が好きだった本を並べた棚。
彼女が泣いた夜に黙って握った手の感触。

それは、恋ではなかった。
それは、愛だった。

恋が去っても、愛は残る。
それは、相手の幸せを願う気持ち。
もう自分の隣にいなくても、
どこかで笑っていてほしいと願う気持ち。

僕は彼女の写真をしまい、代わりに彼女がくれた手紙を机に置いた。
「あなたと過ごした時間は、私の宝物です」
その言葉に、恋の残響が灯る。

愛-恋=願い。
愛-恋=祈り。
愛-恋=静かな灯。

そして僕は、また歩き出す。
恋がなくても、愛は僕の中に生きている。

お題♯愛-恋=?

10/16/2025, 3:24:22 AM