ひとひらの幸せだった。
結局私は最後まで不幸である自分を愛していて、手放せなかったのだ。あなたは私をそこから救ってくれようとしたのに、あなたへの愛よりも自愛が勝ってしまうなんて、我ながら本当に哀れだと思う。
あなたが伸ばしてくれた手は、少し触れるだけで涙がこぼれそうに温かった。世の中にこんな幸せがあっていいものかとその温もりを疑い、疑い、そして信じられるようになった頃にはあなたはいなくなっていた。それに怒ることのできるような立場ではないのは重々承知だけれど、きっと私に残された道はそれだけだったから、ひたすらあなたを恨んだ。そうすることで、またひとつ自分の不幸の芽見つけ出して、あなたの手の温もりでそれを育てた。こんな文字列を綴っているだけで気持ち悪くなる行為だと、思う。
あなたは優しいから、こんな救いようのない私に手を差し伸べてくれたのだ。だから、救えなかったことを苦しまないで。それはきっと必然で、私たちは離れる運命だったのだ。そう思うのに、こう綴りながら涙が止まらない。私は、何にも代え難い存在を自分から跳ね除けたのだ。
ある日、あなたと桜の木を見つけた。綺麗だねと眺めていると、私の頭に花弁が降ってきたことがあった。あなたは笑いながらそれを取り、どうぞ、と私の手のひらに乗せてくれた。そのひとひらの幸せを、私は押し花にしてずっと持ち歩いている。だから、あなたは私をとっくに救っていたんだよ。私はとっくにあなたに救われていたんだよ。それは、呪いにも似たあなたと言う救い。温かい、火傷のような、跡。
4/13/2025, 12:03:55 PM