……あ、入道雲…………。
夏休み半ばで見たその雲は、大きな雨や雷を運ぶ。
そこから約1時間後に、一帯は激しい雨に包まれ、雷がなっていた。
突然の雨に走り出す人、持参していた傘を慌ててさし歩く人、自転車をものすごいスピードでこいで走り抜けていく人……私はそのどれでもなかった。
家の中は窮屈で、冷たい。生きる価値すらわからないまま、半端にこの歳まで生きてしまって正直後悔している。
勉強ができなければ罵られて、学校にも居場所は無い。
私にはなにも「特別」がなかった。
クラスの人達は、日々好きなことで話題を広げたりしているけれど、私には趣味も特技もなく、つまらない人間だと認識されているらしい。
…………あの子は勉強ができて、あの子はスポーツ推薦をもらった。あの子は英語が得意で、立派な大学に入学が決まっている。
あの子は読書が好きで、あの子は話すのが好き。
みーんな個性があって、ちゃんとニンゲンなんだ。
……雨に濡れながらゆっくりと進む。
すれ違う人は皆、私をおかしいものだとでも言うような目で見つめてくる。
ここも、居心地が悪い。どこも大して変わらないのだ。結局、個性のないものに居場所はない。
あの瞬間に入道雲が出てよかった。
…雨が降れば、この涙が見られることはないのだから。
6/29/2024, 1:51:18 PM