小音葉

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美しい世界は酷く息がし辛くて
忙しく上下する胸を隠して
万雷の喝采の中で、またひとつ
私を構成する細胞が死んでいく
私も同じ色に染まれたのなら
きっと楽に生きれたのだろうけど
ごめんなさい
誰に告げるでもなく風に呑まれて
己の足に踏み潰される声

私が纏うに相応しくない色
溶け込めない、馴染めない
なり損ないのソースのように
濾されて塵箱行きの、大切だった何か
よく似た顔で笑いたかった
道化になれない液晶の仮面
見れば見るほど歪な綻び
せめて淘汰しなければならないと
私は毒を吐いたんだ
汚れた残骸に寄るものはなく
妥当な末路、けれどまだ終わらない

望まれる私にはなれなかった
幼い頃の夢を裏切って
罪を抱えて生きていく
酷く息苦しい世界のどこかで
無様に這って生きていくよ
西陽のカーテンを綺麗だと思う
知らぬ映し絵に物語を思い描く
きっと、それだけで良いのだ
私の人生など、誰の記憶に残らなくても

(酸素)

5/14/2025, 1:10:53 PM