霜月 朔(創作)

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鏡の中の自分



私が恋い焦がれる彼。
純粋な心、輝く瞳、
太陽のように眩しい笑顔。

手を伸ばしたくても、
罪に塗れ、穢れ切った私は、
彼の隣に立つ資格がない事は、
私自身が、よく知っています。

それでも、
心の底では、
彼の心が欲しいと、
願ってしまうのです。

密かに彼の姿を、
視線で追い掛け、
誰にも知られぬ様に、
想いを募らせるのです。

もし、本当に彼を愛しているなら、
この感情を封じ込め、
彼が、私ではない誰かと、
幸せになる事を、
祈るべきなのに…。

だから私は、
鏡の中の自分に、
そっと告げるのです。。

『彼の幸せを望むなら、
この恋は叶えてはなりません。』

その言葉は冷たく鋭く、
私の心に突き刺さります。

それでも、
彼が笑顔でいられるなら、
私は独りでいいと呟いて、
そっと、微笑みます。

なのに、
鏡の中の自分は、
滲んだ瞳で、ぽつりと、
涙を落としていました。

11/3/2024, 7:52:42 PM