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【終わりなき旅】

出発したのは今から三十年前
きっかけは国から出された極秘の任務だった
任務の内容は星々の調査
それから人間が住める星を一人で探せというものだった
だが火星など学生でも知っているような星ではなく
人間が住むことができる未知の星を探し出せとのことであった

けれど三十年経った今も
人間が住める未知の星は見つからない
それどころか未知の星すらほとんど見つけられていない

私は今日も一人で宇宙船に乗り
この広い宇宙を漂っている
宇宙は果てしない
いつか人間が住める星を見つけられたとしても
星々の調査には終わりなどない
私は人々のために終わりなき旅を続ける
ここを出発する前に
自分の人生を全て捧げる覚悟は決めてきた
そして、死ぬまで地球に戻れない契約を承諾して出発した

私がここで調査をするだけで
地球の家族は一日につき五百万円を受け取ることができる
地球に置いてきた子供たちも
もうとっくに立派な大人になっていることだろう
妻は元気にしているだろうか
時々連絡は取っているが、さすがに声が歳を取ってきたように感じる
人々と家族のために、私は孤独な終わりなき旅を
終わらせるわけにはいかないのだ

調査を一度中断して休憩する
無重力で宇宙食がくるくる回っているのも
丸くなった水が浮かんでいるのも
もう珍しい光景ではない
調査の他の楽しみはほとんどないが
宇宙船の窓から外を見れば
今日も地球が綺麗だ

5/31/2024, 7:39:24 AM