極星

Open App

「ねえ、あなた」
「ん?」

目を伏せて"遠くへ行きたい"と僕が呟けば、彼は無言でこちらを柔らかく抱きしめ、僕の肩口に顔を埋める。
真正面から抱きしめてきた彼の口が、僕の耳元でハクハクと動けば、その空気の動きが僕の耳を擽りこそばゆい。
この何気ない仕草も、彼の震える腕も、今ある幸福全ては数日後には消え去ってしまうものだとは、僕にはまだ膜を隔てたことのように思えてしまう。

2/28/2026, 12:51:13 PM