てふてふ蝶々

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時間よ止まれ

君がくれたチョコレートはカバンの中。
バレンタインに「勉強の休み時間にでも食べて。」
授業終わりにこっそりくれたチョコレート。
俺が食べた事ないような高そうなやつ。
俺ん家、貧乏だから公立しか無理って言われてるし、
中学の制服も近所の兄ちゃんのお下がりだし、アパートだし。
貧乏は嫌だ。
ただそれだけで、何をしていいかわからなくてがむしゃらに勉強してきた。
私立の合格はもらえたけれど、通わせてもらえないから嬉しくもない。
あと少し、高校生になったらバイトだってできるし、奨学金借りて大学行けば貧乏な暮らしじゃなくなるよな?
君がくれたチョコレートだって、自分で買えるようになるよ。
さぁ、詰め込んだ知識の放出だ。
「はじめ」
の声と同時にカリカリと皆がペンを走らせる音がする。
俺も負けじとペンを走らせる。
残り15分。
見直しの時間だ。
途端に不安が押し寄せる。この紙切れに俺の人生がかかっているんだ。
勉強していた時、金持ちの家の奴を羨んだ時、家が貧乏で悲しかった時。君がくれた見た事ないような綺麗なチョコレートを貰った時。
フラッシュバックみたいな走馬灯みたいな記憶と焦燥感で吐きそうになる。腹も痛くなる。
お願いだから。
頼むから。
時間よ止まれ。

2/16/2025, 1:04:19 PM