正直
まぁ、目の前に座った取調官?そんな般若の如き形相で見なくてもいいじゃないか。と、内心溜息をつく。
『正直に言え!知っている事全てだ』
全部言ってもどうにも出来ないと思うけどな。
『分かりました。自分は未来から来ました。マシンが故障したので修理をしたくて研究施設に行きました。話が通じないので少し眠ってもらいました。過去の人間に関わってはいけないので。それで、必要な物を手に入れたので出ようとしたら警備の方々が来ました。逃げないといけない所でしたが、少し争いになってしまった訳です。誰もケガはしていないはずですが?。』
正直に話したが、ふざけるな!とツノが生えてきそうな顔をしている。暴力を我慢しているだけ偉い。コンプライアンスはいつでも重要だからね。取調の可視化も始まったばかりみたいだし、修正できるか、矛盾なくつなく事ができればだけど。
『名前は?親はなんと思う?』
急にトーンを変える。揺さぶりか。
『@#&@です。親はもっとちゃんと出来なかったのかと言うと思います。』
瞬きの間で何か考えているようだった。
『医者だ。ふざけているのか、本気かわからん』
まずいな、時間がなくなる。修理終わったかな。
『かわいそうにな。辛い事が沢山あってネジが違ったんだな。病院行って調べてもらおうな?』
急に優しくなった。あぁ、これで先に来た連中が戻って来れなかったのか。ついでに連れ帰ろう。
『病院はどこですか?』
修理完了の連絡が頭の中で聞こえる。
『今すぐ行きたいです。』
連れて行け と、命令をすると哀れむような顔をする。
『もう戻れないぞ』
なんだ。そんな事か。問題ない。
『ありがとうございます。戻らなくて良いので安心しました。』
怪訝な表情を浮かべ、般若みたいだった顔は哀しげに見ている。般若って元は優しいんだよな。
互いに正直だったが噛み合っていなかったようだ。
まさか、あの取調官がこちらから来た者だったとは。
まぁ、時代が違うからこの病院と言われている収容施からも戻れるだろう。取調官にはお礼をする握手の際に記憶認知阻害薬を打っておいた。
正直、彼はもう戻れないからね。さぁ、仲間を連れて帰ろう。
6/2/2024, 11:29:52 PM