猫背の犬

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「一年経ったら今あるこの想いも忘れちゃったりするのかなあ」
氷菓を頬張りながらそんなことを言うこいつに俺は相槌のひとつも打ってやれない。
「一年経ったらとか言ったけど、もしかしたら明日にでも消えてる可能性あるよね。ほら、想いって移ろぎやすいし」
なんでそんな悲しそうな顔しながら終わりを紡ぐのか。どうすればいいかわからなくなる。どんな言葉をかけることが正解で、どうしてあげることが最善なのか。
「君はどうなの?」
「どうってなんだ」
「いやだからさ、一年後も変わらない想いとか、そういうのあるのかなあって」
「変わらないのは無理だ。だけど、たぶん今よりお前のことを大切に思う気持ちが大きくなってるとは思う」
「なんだそれ」
困ったようにも嬉しそうにも見える微笑みが夕闇に溶けた。今夜もしも星が流れるのなら、一年後もこいつと今みたく氷菓を食べながら他愛無い話ができますようにって願おうと思う。

5/8/2023, 11:32:35 AM