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とある日の午後。ベッドの上でゴロゴロしていて、ふと起き上がって、何となく窓を覗くと、小学生達がキャーキャーと騒ぎながら家に帰る様子が見えた。
何人かのグループで帰ってる子達と、一人で帰ってる子。赤いランドセルがキラキラ光っているのに、何故か表情は暗く見える。
そんな景色を見ている私の顔が、窓にうっすらと映っている。見てみると、まるで人形のように一切表情を変えず、目に光も宿っていない少女がいた。
今年で私も、高校二年生。不登校気味なのをのぞけば、ごく普通の女子高生。ギリギリ単位を落とさない程度に授業に参加し、提出類も全部出すようにしている。勉強は得意な方だから、家で授業でやったところを復習したり、予習したり、それだけ。
友達はいない。
「……あ」
ふと、右耳からワイヤレスイヤホンがポロッと落ちる。すぐ枕の側にあるスマホに、コツンっとワイヤレスイヤホンが当たった。すると、画面にホーム画面が映し出される。
そして、再生されている曲の題名も一緒に。
「……あめ」
私がそう言うと、外にパラパラと雨が降り始めた。帰宅していた小学生も、折りたたみ傘を出したり、または急に走り出したりと、それぞれの個性が出るような行動に出る。
小学生か。あの頃はまだ、何も知らなくて、だからこそこんなに無邪気でいれて……。
でも、今の私も、何も知らない。なぜ私が学校に行くのが嫌なのかも、今流れている曲の事も、そしてひとり寂しそうに帰る一人の少女のことも。
この窓から見える景色は、まるで私の心情を表しているかのように、雲は厚くなり、雨も強さを増していく。
それでも、ただ1人で、顔を下に向けて、ゆっくりと歩く少女。
あぁ、似てる。私に。

窓は、雨に濡れて、景色がボヤけてしまった。

9/25/2023, 11:11:19 AM