わをん

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『夏』

ある年の7月に世界が終わるという噂が広まったことがある。その当時小学生だった私は成人する前に世界が終わるかもしれないということを同級生たちとよく話題にしていた。どこに逃げればいいか、どこに隠れればいいかをカウントダウンの差し迫る中でみなと考え、そういった話し合いのできないひとりきりの布団の中では涙ぐむことさえあった。
そしていよいよ迎えた世界の終わりの年の7月1日。緊張感の漂う毎日は一日また一日と日を重ね、結局何も起こらないまま7月31日を終えるという形で幕を閉じた。何も起こらず肩透かしを食らった私は無事に成人して年を食っておじさんになっていったけれど、いまだに7月になると何かが起こってしまうのではないかと少しだけ胸にざわめきを覚える。
図らずも今年の7月は同窓会がある。懐かしい噂話は話題に上がるだろうか。それとも、みなそんなことはとうに忘れてそれぞれの生活に没頭しているだろうか。いずれにしても楽しみなことである。

6/29/2024, 8:35:05 AM