「蝶よ花よ。」
※百合表現あり
なぜ貴女は、それほどまでに美しいの?
私なんてこんなに見窄らしいというのに。
「今日はなんの日かわかる?」
貴女の声が聞こえる。
忘れるわけないじゃない!
今日は私達が結ばれた日!
周りの目はまだ厳しいけれど、
貴女となら乗り越えられるわ!
でも伝えられない
私は植物状態らしいの。
意識はあるのに、抱きしめたいのに、
行動することができない。
いっそ本当に植物になって
動物や虫達と一緒に
歌を歌えればいいのに
「私の死期はもう近い」
そう先生が言っていたのが聞こえたわ
貴女は先生の前でも泣いてくれたのよね?
それがどうしようもなく嬉しかった。
それと同時に貴女を泣かせてしまった私を
憎いと思った。
私だって貴女のために泣きたいわ。
正直、私は死ぬのは怖いし
貴女を五感で感じられないのが辛い
貴女ともう会えないと思うともっと辛い
死にたくない
でも、もう避けることはできないのよね?
植物状態でも手術で延命はできるらしいけれど、
私の身内は貴女だけだし、貴女もお金が多くない。
そんな中で私達が幸せになる未来なんて見えないわ
そんなことを考えていると私の頬が濡れた。
「え、涙…?」
そうかこれは涙なんだ。
私は生涯の一番最後に貴女のために泣けたのね、
嬉しい、嬉しい!!!
この涙は私を育てる水で、貴女は私を照らす太陽!
蝶よ、花よ!
彼女と私のもとで咲いて、
私達の人生にスポットライトを当ててちょうだい!
今なら私永遠に、
ツー
「ぇ、」
この音は何、なんでこの子は
そんなに嬉しそうに泣いているの?
死んでないよね、死んじゃだめだよ!!!
私を置いて一人で逝かないで、幸せにならないで。
もう一度、お母さんって呼んでよ。
植物状態で幻覚を見て自分を大人だと思い込んだ少女
と
シングルマザーのお母さんのお話
「今日は貴女の誕生日だったのよ
20歳、おめでとう。」
8/8/2024, 2:22:52 PM