同情
腕のない赤子を見て、可哀想だと思った。それが悪だとか、一人一人の意識を変えるべきだとか、そんな代弁者じみたことを言いたい訳ではなく、ただ、不条理にそう思った。白髪混じりの女性が若い連中に混ざって働いている時や、虚空を怒鳴る老人を見た時も、確かそれと似たような感覚を覚えた。
私の親戚に一人、妄想癖の人がいる。その人はある日には河童を見た、ある日には空と話したと言うので、私も幼いながらに薄らと理解はしていた。一応両親からも説明はされていたように記憶している。昔はその人を気味悪がっていた。だが今は、もし自分のよく話す友が幻だと言われたら、そのショックは計り知れないだろうと思った。
医者からは統合失調症と判断された。私の認知機能や妄言、幻聴からそう判断したらしい。世界の色が反転した。私が正しいと思っていた世界は、世界からすれば異常だと、そう告げられた。
腕のない赤子を可哀想に思ったこと。
虚空を怒鳴る老人に哀れみの目を向けたこと。
同性が好きだということ。
それを人に言えなかったこと。
同情とはエモーショナルに包んだ憐憫の視線である。神様が私に向けたのは愛情だと思っていた。
2/20/2026, 1:20:08 PM