安心と不安
私は生まれつき幸運で、
幼少期大地震が起こった時も家族のなかで私だけは無事。
恋人と同棲中家に強盗が来ても、私だけは無事。
大親友たちに誘われたが、忙しいから、と断った遊び先で事故があり、休んだ私だけは無事。
靴紐を結ぶ為にお祖父ちゃんに先に進んでもらっていたら崖が崩れ、立ち止まっていた私だけは無事。
いつ何があろうと、私だけは死なない。無事。
何が起きても私は安泰、と安心する反面、
これまでの幸運の分、すごく大きな不運が私のもとに舞い降りるのでは?と心配してしまい、最近は夜も眠れない。
ある日ふと、人肌が…生き物のぬくもりが恋しくなり、ペットショップへ向かった。そこで出会ったトイプードルのマロン。
すごく可愛らしく、ショップで上目遣いで回りながら見つめてきた時は、即決で買ったものだ。
この子を引き取って約1年。
なんてかわいらしいのだろう。家族同然…いや、家族だ。
自分の命なんかよりこの子を守らなければ…なぜか、そんな気がした。まあ私は死なないと思うけど。
「今日はお散歩に行こうねー!」
いつもの見慣れた道。5年間ここらへんでは事故が一切起こらない、すごく平和な街だ。ここの住人である、といえことすらとても誇らしい。
ダッ
「っまろん?!待っ―――」
マロンが急に走り出した。その方向は…
がしゃん。と音がした。5年間、聞いたこともこれから聞くこともないと絶対に思っていた、その音。
凄まじい衝突音に遅れて、咄嗟につぶった目を開いた時、
見た光景は―――
サイレンが鳴り響く。玄関で今も鳴っているチャイム。
…あぁ、私幸運なんかじゃないや
これからも、私は自分が何があっても死なない安心感と共に人生を、今を生きていく。
そして、大切な存在が全て消えゆく不安とも―――。
1/26/2026, 5:18:36 AM