→短編・門出
神聖なチャペルで列席者に見守られながら、僕たちは指輪の交換を終えた。
ステンドグラス越しの陽光が、ウェディングドレスに身を包んだ彼女を美しく浮き立たせる。
パイプオルガンの控えめなBGM が流れてきた。これを合図にベールアップという進行。
「ベールアップってね、二人の間にある最後の壁を取り払うって意味なんだって」
彼女が式場選びの時に言った言葉が脳裏をよぎり、ベールに手をかけようとした僕の手が止まった。
動きを止めた僕のモーニングの裾がツィっと引かれた。固まった父親を心配した様子で見上げる幼い息子と目が合った。列席者に座る彼女の小学生の娘も緊張の面持ちでこちらを見ている。
僕は娘に微笑みかけ、息子の頭を撫でた。
色々あったこれまでが押し寄せる。順風満帆な交際ではなかった。お互いに疑心暗鬼になり、別れる一歩手前まで陥ったこともあった。それでもここまでやってこれたのは……――。
僕は彼女に向き直った。ベールの下、彼うつむき加減のまま微笑む彼女が、今までになく愛おしい。
彼女のベールを手に取る。わずかな重さ、すべらかな手触りが僕に強い覚悟をもたらす。
新しい人生の始まり。それはすなわち未来であり、希望であり、大きな責任だ。
最後の壁よ、さようなら。
神聖なやわらかい光に包まれて、僕たちは今日、皆で家族になる。
テーマ; やわらかな光
10/17/2024, 1:26:27 AM