旅路の果てに
旅の先にはこの街が待っている。行き止まりの街に、様々な想いを抱えた人々がやってくる。
「こんにちは。」
一人の老人がヨロヨロと歩いてきた。
「こんにちは。旅の方ですね。」
「ええ。」
老人は虚ろな目で辺りを見渡した。
「……ここには、何もありませんね。」
「そうかもしれませんね。」
あえて、曖昧に返事をした。
「私は、もうすぐ死ぬでしょう。」
老人は思わぬことを口にした。
「なぜ、そんなことを……。」
「長いこと旅をしてきてわかるんですよ。年の功というかね。……この場所は私の人生みたいだ。こんなに歩いてきたのに何もなかった。何かを見つけてみたかった。」
「ここは、何も無いわけではありませんよ。」
そう言って、頭上を指差した。無数の星が光る。
「見えているのは同じ星なのに、こんなにも綺麗なんです。あれらは一つでも欠けてはいけません。」
「……ここで一生を終えてもいいですか。」
数日後、彼が息を引き取ったと聞いた。
次は、誰がやってくるのでしょうか。
1/31/2024, 10:54:27 AM