玲奈

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伝えたい

橙色の夕日が落ちる放課後の屋上に、君はいた。
急いで階段を駆け上ってきたから上手く発声できなかったが、本当に、心の底から伝えたかったんだ。
「駄目、とは言わないけど……やめてほしい。」
目に溢れんばかりの涙を浮かべた君が振り向く。
「でも、これは私が決めた結末なの。私は、私の人生の主人公になれなかった。」
昔、彼女からある話を聞いたことがあった。小さな頃から本が好きだったという彼女は、常に主人公に憧れていて、社会の汚さや愚かさに絶望したとき、自分は主人公になれないと思ってしまったとき、自ら命を絶つ予定であったそうだ。それが、今日だった。
「そっか……。でも、少なくとも、僕の人生の主人公は、今も、これから先も、ずっと君だよ。」
「……ありがとう。」
そう言って君は顎あたりまで高さのある柵から降りてくれた。
こんな形で告白してしまったことが情けなく恥ずかしかったが、今は何よりも、君の人生が終わろうとする瞬間に立ち会えたことを、そして、とめられたことをとても嬉しく思う。
普段ならあまり人に関心をもつことができない僕でも、伝えたいと思えた。
だからきっと、どんな人でも、心の底から伝えたいと思えたことは必ず伝えることができる。
自分の行動はどんなときだって、より良い未来を引き寄せる鍵になる、と僕はそう信じている。

2/13/2023, 10:17:05 AM