yunyun

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「うぅ……」
「どうしたの?」
公園の花壇のそばでうずくまって泣いていたら、同じ年くらいの男の子が話しかけてきた。
「くまちゃんのキーホルダー失くしちゃったぁ……」
「ぼくも探すよ!どんなやつ?」
「ええっと……、茶色の、赤いリボンを結んでいるの!おかあさんとおとうさんに誕生日プレゼントでもらったの!」
「わかった!」
それから日が暮れるまでいっしょに探した。
「……あっ、あった!!」
全身土で汚れた男の子が、満面の笑顔でキーホルダーを掲げていた。わたしは駆け寄ってキーホルダーを受け取った。
「ありがとう!わたしの大切な宝物なの!」
「いいよ。どういたしまして。」
その時、あたりは真っ暗になっていて、たくさんの星がきらきら輝いていた。今日は七夕なので、天の川が見えた。
「わぁー、きれいだね!」
「あっ、流れ星!」
「どこ!?」
二人でわちゃわちゃしながら、家に帰って言った。
この男の子が、私の初恋相手との出会いだった。

「……そんな時もあったなぁ。」
あのときの公園で星空を見上げて思い出に更けていた。十年前のあの日と変わらないたくさんの星たちが瞬いていた。今日は七夕だ。織姫と彦星が一年に一度会える日。同時に彼こと、流星のことを想うと胸がきゅう、と苦しくなる。
流星は文字通り流れ星が流れた日に生まれた。星のことが好きで、そのことを嬉しそうに話してくれる。その影響で、私も星が好きになった。
流星は、私の片想いの相手。ただ、高校は別だ。だけど、近いうち、告白しようと思っている。
「あっ、まだ帰ってなかったの?」
後ろから声が聞こえてきた。思わず顔に出そうになるのを抑えて振り向くと、流星がいた。部活帰りらしく、遅い時間帯になってしまったみたい。今は八時。お母さんには遅くなると連絡しているから大丈夫だ。
「大丈夫。連絡しているから。」
ブランコから立ち上がる。流星は星空を見上げていた。私もつられて見上げた。星が数え切れないくらい、たくさん輝いている。
「きれいだね……。」
流星が呟いた。
つうっ、と流れ星が流れた。あの日と同じように流れた。
……もしかしたら、私の初恋も叶うかもしれない。流れ星はもう流れたけど、この想いは叶うかもしれない。なぜかそう確信できた。
意を決して、流星の方を向いた。
「流星。あの、言いたいことがあるの。」
流星が驚いてこっちを向く。自然と目が合うので、うまく話せなくなる。
「どうしたの?」
流星が心配そうに私を見てくる。そんな表情も大好きだ。
深呼吸して、自分を落ち着かせて、渾身の告白をした。
「私、りゅ、流星のことが、好きです。」
「…………えっ。」
流星がこっちを向いて固まっている。恥ずかしくて目を合わせられない。伝えれた。精一杯がんばって伝えることができたから悔いはない。あとは、流星の返事だ。身構えていたら。
「あ~あ。先、越されちゃった。」
えっ、と思い流星を見ると、口元を押さえて顔が真っ赤になっていた。
「ぼくも、夏海のことが、好きです。」
その言葉を聞いたとき、胸が張り裂けるぐらい嬉しくなった。
二人の頭上に広がる天の川の上では、織姫と彦星が会えるように、たくさんの星が輝いて二人を導く道しるべとなっていた。

4/5/2024, 7:21:00 PM