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どこまでも続く青い空


その一瞬、風が強く吹いた。風が髪を揺らし、服の隙間を通り抜ける。
世界はシン、と音を立てるのをやめて、その一瞬を永遠のように思わせた。
目の前に広がる壮大な景色に、自分の存在があまりにもちっぽけなものだと改めて自覚する。それなのに自分以外に動くものが何もないから。まるで世界には自分しかいないみたいに感じるから。
どこまでも続く青い空には道標になる雲すらなくて、それでいてどこへでも好きなところへ行けと背中を押されているように感じた。
背中を押す風に抗うように振り向く。向かい風の中、この道を進むのは厳しいとは知っていたけれど、不思議と笑みがこぼれていた。
向かい風だってかまわない、道標なんてなくたっていい。
私が歩いた後ろが道になればいい。私が誰かの道標になれたら、いい。

10/23/2022, 12:30:20 PM