NoName

Open App

 夕方から集まって、仲間たちと君の家で過ごした。瞬く間に時間が過ぎて、気づいたらかなり遅い時間になっていた。家が近い人は徒歩で帰っていった。私ともう一人はそのまま朝まで過ごさせてもらうことにした。

 朝になると、急ぐからともう一人が出て行った。私も帰る準備をしていると、君がごそごそとバックの荷物をひっくり返している。「一緒に出ようと思ったんだけど、鍵が見つからない」と言う。「今日は、お休みなんでしょ? 悪いんだけど、このままここで待っててくれない? 昼過ぎには戻るから」。

 鍵をかけられないなら仕方がない。待つことにした。いない間、その辺を探してみた。こたつの下や、本棚の辺りを見たけれどなかった。
 昼過ぎに君が帰ってきた。皮のキーケースを手に「鍵、あったよ。落ち着いて探したら上着のポケットに入ってた…」。目が合った。すると、慌てて「ごめん、嘘ついた。鍵、家を出る時ポケットにあるのに気付いてた。でも、いてほしかったんだ」。

 君が嘘をついていたのは、なんとなく気づいていた。皮のキーケースが上着のポケットから、ちらっと見えていたから。「よかったら、今日一緒に過ごせない?」と、君は少し恥ずかしそうに言う。「嘘ついたの自己申告したから、まあ、いいよ」と言いながら私は思わず笑顔になっていた。
 


「君が隠した鍵」

11/25/2025, 9:20:13 AM