▶17.「冬になったら」
16.「はなればなれ」
15.「子猫」
:
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
---
光や熱を吸収して動力にしている人形にとって、
寒い冬は厳しい季節である。
日照時間は減り、気温も低くなる。
人形の体も冷えやすく、人間の目をごまかすためには放熱しなければならず、エネルギー問題に拍車がかかる。
✕✕✕は、旅で最初の冬にそれを身をもって経験し、
冬の間はできるだけ南の方に行くようにした。
それでも人に混じって生活するのは困難を伴う。
太陽がなければ火を起こせばいいのだが、
冬は燃料代も上がるし、暖炉のある宿などそうそうない。
蝋燭ではエネルギーの減少は防げても増やせるほどの火力はない。
そして蝋燭ばかり燃やすのは奇異に思われる。
(冬になったら…)
冬支度を始めた人々を見ながら人形は最適解を探す。
(いっそ人間のいない所に行こうか)
例えば山に入って1人で過ごす。
山小屋を借りてもいいし、
住居環境が整っていた方が体の修復も少なくてすむが、借りる手間を考えたら洞窟でもいい。
いつもより騒がしい通りを歩きながら、✕✕✕はどうするか算段を始めた。
11/18/2024, 8:32:39 AM