かたいなか

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【世界線管理局 収蔵品
『闇堕ちの呼び鈴:レプリカ』】
いわゆる小さなハンドベルタくイプ。
闇堕ち、欲望表出、黒化など、
既に滅んだ某世界で発生・成長した類似のヘキが、呼び鈴の形で結晶化した。
これは、そんな呼び鈴の低威力模造品。
管理局が作成したレプリカである。

音を聞き続けていると、心魂の奥底の「闇堕ちに丁度良さそうな」「隠された部分」が、じわじわ表層へ上ってくるのが分かる。
「隠された部分」というのは、得てして、対象のナイショナイショな「願い事」であるため、
メタいハナシながら、ここで今回のお題回収を最速でキメることが可能。

レプリカといえど効果はお墨付き。
ノイズキャンセリングイヤホンは何度か突破されたので、振る際、耳栓必須。

<<耳栓必須>>

――――――

今日も平和な厨二ふぁんたじー組織。「ここ」ではない異世界に存在する世界線管理局である。
法務部執行課、実働班特殊即応部門のオフィスでは、
なにやら人だかりができており、
中心のデスクではビジネスネーム「ルリビタキ」を名乗る部長が頭を抱えておって、
彼の膝の上では、よく遊びに来る稲荷の子狐が、
全身真っ黒、脅威の光吸収率な体毛に成り果てて、目だけがクリクリ美しい。
欲望、すなわち「願い事」を剥き出しにして、ジャーキーをちゃむちゃむ、食っている。

「オイシイ。オイシイ」
ヘソ天キメて、コンコン5本のジャーキーを、
ちゃむちゃむちゃむ、ちゃむちゃむちゃむ。
「ジャーキー、モット、ジャーキー!!
ブチョビタキ、オナカ、ナデロ!!」
非常に、子狐している。
非常に、「いつも以上に」、子狐である。

管理局が滅んだ世界から回収してきた収蔵品、「闇堕ちの呼び鈴」の持ち手が、あんまりにも、子狐にとって噛みやすかったらしい。
噛んで持って、ぶんぶん振ると音が出るので、
楽しくて楽しくてぶんぶんぶん、ぶんぶんぶん。

結果、子狐の心魂の奥底の、「闇堕ちに丁度良さそうな」「『隠された』部分」が、
ぶっちゃけ、子狐には、一切無かったので、
ポン! 闇堕ちの呼び鈴の「絶対闇堕ちさせるチカラ」が大暴走。
子狐を真っ黒くろすけの2Pカラーに染めて、
いつもの子狐を、更に「いつもの子狐」に仕立て上げてしまったのだ。

子狐の「願い事」を剥き出しにした、本能全振りコンコンの爆誕である。

黒い部分を持たぬ子狐に敗北し、ただ願い事を表に出しただけの呼び鈴は、直後、パキン。
割れて壊れて、闇の砂粒として消えていった。

「チョビタキ!ルブチョビタキ!!」
ところで、闇堕ちの呼び鈴は、闇堕ちをさそうが、光に戻さない。
「アソベ!オナカ、ナデロ!ジャーキー!!」
現在、呼び鈴を収蔵・保管しておったところの、収蔵保護課のアンゴラとドワーフホトが、
子狐を元に戻すべく、最適解の収蔵品をピックアップして法務部に急行中。
「ブッチョ!ブッチョサン!!」
ルリビタキは、彼女たちが到着するまでの間、
「管理局での保護者役」として、子狐を監視し続けている、のだが。

「ブッチョビタキッサン!!」
子狐の大声がひどかった。
ツボに入ってしまった局員には、口を押さえれば良いのか腹を押さえれば良いのか、途方に来れている者さえいた。
子狐のルリビタキを呼ぶ言葉が、彼等の腹筋にダイレクトクリティカルアタックし続けているのだ。

「あのッ、ブッチョ、……ルリビタキ部長ッ」
見よ。あわれな部下が3人して、上司に気を遣い、オフィスから出ていく。
「おれたち、例の機構の女性の……ぐふぅっ!」
ルリビタキは彼等に目を合わせない。
ただプラプラ、右手を振って、出発をうながすだけであった。

「ブッチョサン」はその日の部署内トレンドになったとさ。 おしまい、おしまい。

7/8/2025, 3:02:42 AM