雪川美冬

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久方ぶりに帰った実家。
小さい頃から使っていた部屋に入って片付けを始める。
中学や高校の制服、教科書
本棚に入りきらない漫画と小説
わがままを言って貰った父の形見のラジカセ
昔好きだったゲームや好きなアーティストのCD
大好きな部活の先輩から卒業式に貰った造花の花束
子供の頃にクレーンゲームでとったたくさんのぬいぐるみ
初めてのバイト代で買ったノートパソコン
推しのライブチケットとたくさんのチェキ
たくさんの思い出とわたしの青春を詰め込んだ部屋
家出した時から何も変わっていない部屋
脱ぎっぱなしのパジャマも
飲みかけのアイスココアも
溢れかえったゴミ箱も
いろんな種類のお菓子が入った箱も
全部全部、あの日から時間が止まってしまったかのようにそのまま
家出した日、まさか母も姉も弟もみんな強盗に殺されちゃうなんて思いもしなかった。
ここに帰らなければ、いつまでも現実を見なければ、今もまだここで3人が暮らしているんだって思い込めた。
先日祖母がこの家を売るから必要なものを取りに来るように言った。
だからわたしは重たい腰を上げてここに戻ってきたけど、やっぱり来なければよかった。
この部屋にあるものは別にどうでもいい。けどこの家にある母の部屋も姉の部屋も弟の部屋も父の仏壇も、何もかも、わたしは捨ててほしくない。
いつまでも、捨てないでこのまま取っておいてほしい
そう、願ってしまうのだ


お題「いつまでも捨てられないもの」

8/17/2024, 5:15:48 PM