朝、目が覚めて制服のリボンを結んでいる途中、どうしようもなく悲しくなった。
どうしてそう思うんだろう、と首を捻りつつ涙を拭いて学校に向かう。
先生の点呼をぼんやり聞き流していると私の次に言われる人の名字が違う気がした。
休みかな? と思って先生に訊こうとしたけど、すぐやめた。
その人の名前も姿も顔も思い出せないことに気づいてしまったから。
大事だったはずなのに。写真も撮ったはずなのに。
そもそもクラスメイトで友達だったはずなのに。
……そう、家に遊びに行ったこともある。……はず。
でも頑張って思い出そうとしても、まるで影絵のように真っ黒なシルエットしか頭の中に出てこない。
あの人が男だったか女だったか、誕生日はいつだったか、席はどこだったかさえ思い出せない。
……でも、確かにいた。……よね?
この違和感を誰かに言いたいけど、周りはいつも通りに過ごしている。
だから私がおかしいんだ。
なんで急にイマジナリークラスメイトなんか頭の中で創造しちゃったんだろう?
罪悪感と違和感で頭がぐるぐるしていると具合が悪いと勘違いされて家に帰るよう先生に促された。
授業なんて受けても絶対身につかないと思ったし、何よりここから去りたい気持ちもあったから逃げるように家に帰った。
部屋に入るなり私は鞄を投げ出してベッドに倒れ込む。
そして適当な白い紙を引っ張り出して黒いペンで人のシルエットを殴り描く。
「ねえ……あなたは、誰……?」
わかってはいたけど、答えなんて返ってこなかった。
4/19/2025, 1:46:43 PM