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お兄さんっていい人───?

そう声をかけてきたのは少年だった。

場所は特筆することもない交差点。
重たい雲は空を覆い、
雨が赤く染まるコンクリートを薄く広げている。

それの中心には、純粋な。
透き通った瞳と、白雪髪の少年。
その頭の上で、犬耳がぴょこぴょこ跳ねている。

彼の周囲には、欠損の見える数多の遺体。
転がる拳銃に、抉れた様なコンクリートの傷。
その中心から。
真っ直ぐに、冷や汗を流す俺へ問いかけている。

コレは───なんだ?
どう言う状況だ?
いい人ってなんだ?
傷つけていい人、と言う問いなのか?
善人なのか、と言う問いなのか?
頼む、もう少し説明してくれ!

そんな内心はおくびにも出さず


…俺は……よくない人だよ。


自嘲を込めて、そう答えた。

パチパチと目を瞬く少年。
そんな彼に、余った菓子パンを手渡して、
そのまま背を向ける。

正義の味方なんてガラじゃない。
悪事のツテなんて持ってない。
自分の命が大切な子悪党…それでいいじゃないか。

あくまで俺は一般人。
そうだ、帰ったら適当にドラマでも見よう。

そんな気楽さで家に帰った俺は、
玄関先で後悔する事になる。

ウチはペット禁止だってのに…
どうやら、善悪って奴は、
ハッキリしとかないといけないらしい。



4/27/2026, 3:57:24 AM