黄昏時、それはーーな時間。
「さーて、今日もお仕事頑張りますか!」
「頼むから無理はしすぎないでくれよ…」
黄昏時に幽世と現世を彷徨う魂たちを正しいところに導くのが俺たちの仕事。迷える魂がいればその魂を悪い方へ連れて行こうという輩もいる。そんな奴らから迷える彼らを守るのも仕事のうちだ。
「…守〜?なんで今日は制服できてんだ?あぶねーから隊服で来いって言ってるよな」
「ごめーん隼さん!今日ガッコが長引いちゃって着替える時間なかったんだよね!」
「嘘つけお前!どうせ寝坊して忘れてただけだろ!」
「……。(なんでバレんの)」
ーーこんな軽いやり取りができることが嬉しい。
隼さんと俺が出会ったのはまさに俺が悪い魂にあっちに連れてかれそうになっていた時。
現世の人間と幽世の魂を引き離すには力がいる。それも特別な力、大きな力。大きな力を使うということはそれなりのリスクを負うということ。
それが、記憶。隊員は小さな記憶のかけらを消費して人間と魂を引き離す引力を召喚する。
隼さんが俺を見つけてくれたのが運悪く俺が幽世に連れていかれる直前で、彼は力を召喚するために多くのかけらを使いすぎた。
彼は半年分の記憶を失った。失う記憶は選択できない。新しい記憶から失うのではなく、無作為に記憶のかけらを失う。大切な記憶だろうが、何気ない記憶だろうが。関係なく。
悲劇、彼は数週間前に結婚したばかりだった。家族との大切な、本当に大切な約束の記憶のかけらを消費してしまった。
俺のせいで。命の恩人の人生を俺が壊してしまった。
彼が、また取りこぼしてしまわないように、彼と同じ思いをしてしまう人を作らないために、俺は今日も精一杯仕事に励むのだ。
「今日も俺が迷い人をお守りするぞ!」
「ったく、俺もいるっつぅのに…。」
10/1/2023, 12:40:40 PM